現場でよくあるケースの対処法
苦痛をなるべく和らげよう
痛みへの対処法
褥瘡によって生じる痛みは本人にとって非常につらいものです。真皮層が損傷した状態だと特に強い痛みが生じます。神経終末が真皮層に集中していることが原因です。逆に、深い褥瘡の方が痛みは少ないケースもあります。また、炎症や感染症などがある場合も強い痛みが生じます。
このような場合は、内服薬や点滴による処置が必要になります。処置の前には鎮痛剤を使用し、痛みを最小限に抑えなければなりません。空気に触れると痛むので、軟膏やドレッシング材を用いて患部を守ります。加えて、処置をすれば痛みが落ち着くことを事前に本人に伝えることも重要です。褥瘡を洗浄する場合は、水道水では痛む可能性があるので生理食塩水を利用するといいでしょう。洗浄水の温度は人肌にします。温度が高いと治癒が遅延し、逆に低いと皮膚温が下がってしまいます。水圧はある程度必要ですが、痛みの度合いに応じて調整します。
がんによる痛み
がんを患っている場合、がんそのものの痛みもあります。体位変換や褥瘡の処置のために身体を動かした際に、がん性疼痛が生じます。特にターミナル期では身体に触れただけで痛みが生じ、寝返りを自力で行うのが困難なケースもあります。
この場合は、なるべく素早く楽な体勢にしてあげなければなりません。褥瘡ケアで必須のガーゼ交換や洗浄は、ターミナル期の利用者にとって大きな苦痛を伴います。滲出液が多い場合は吸収力のあるドレッシング材を使用して交換する回数を少なくするといった工夫も必要です。
剥離刺激による痛み
皮膚からドレッシング材やテープを剥がす際も注意が必要です。皮膚の角質が取られ、それと同時に痛みが生じます。皮膚の状態が弱まっている場合、皮膚そのものが剝がれてしまうリスクもあります。
その場合の対処法として、剥離剤を使用します。剥がし方としては、一方の手で皮膚を押さえつつ、ゆっくり優しく剥がしていきます。必ず両手で作業を行うようにしましょう。ドレッシング材やテープの基材によっても剥がし方は異なります。正しい剥がし方を事前に確認しておきましょう。非粘着性ドレッシング材が褥瘡に固着し、痛みが生じている可能性もあります。その際はお湯で湿らせながら剥がしてください。なお、剥離剤は保険適用がなく雑品扱いになります。そのため、利用者本人に購入してもらう必要があります。ドレッシング材やテープに関しては、アクリル系よりもシリコン系の粘着剤を使ったものの方が肌には優しいです。
褥瘡への関わり方をもっと学びたい介護士におすすめ
-
介護士ができるのは予防ケアのみ
褥瘡の処置は医療行為になるので、介護士ができるのは予防ケアのみです。自分の行為が医療行為に該当しないように注意してください。褥瘡の原因や症状についても確認しておきましょう。